若手社員を育成するなかで、こんな戸惑いを感じることはないでしょうか。
「まずは自分でやってみてほしいのに、細かく説明しないと動かない」
「分からないことがあれば聞けばよいのに、指示されたことだけをやっている」
「失敗を恐れて、自分から仕事に踏み込もうとしない」
一方、若手社員からは、
「きちんと教えてもらっていないのに、できることを求められる」
「何を基準に判断すればよいのか分からない」
「マニュアルや具体的な説明があれば、自分で進められるのに」
という声が聞かれます。
上司と若手のどちらかが間違っているということではありません。
そこには、「仕事はどのように覚えるものなのか」という前提の違いがあるのではないでしょうか。
上司にとって「見て覚える」は成功体験
上司自身は、先輩の仕事を見ながら覚え、ときには失敗もしながら、仕事を身につけてきました。その経験の中には、自分で考え、試し、そこから学び取るというプロセスがありました。
だからこそ、「見て覚える」という育て方には、自分で考える力や主体性を育てる意味があると感じている上司も少なくありません。
では、若手が具体的な説明やマニュアルを求めることは、本当に「主体性がない」ということなのでしょうか。
そして、主体性は「教えないこと」で育つのでしょうか。
若手は、なぜ具体的な説明を求めるのか
仕事の経験が少ない若手にとっては、何を基準に判断すればよいのか、そのものがまだ分からないことがあります。
経験を積んだ上司には当たり前に見えていることも、若手にはまだ見えていません。
また、現代の若手は、分からないことがあれば調べ、必要な情報やノウハウを得てから取り組む環境で育ってきました。仕事についても、必要な情報や手順を理解してから取り組みたいと考えることは、自然なことです。
これは、主体性がないということではなく、仕事を覚えるための入り口が、上司世代とは異なっていると考えることもできます。
さらに、若手が指示されたことだけをしようとする背景には、「失敗したくない」という気持ちだけではなく、自分の判断で進めて上司の意図と違っていたら、かえって非効率になるという考えがある場合もあります。
若手にとっては、事前に必要なことを確認してから進めることも、仕事を効率的に進める一つの方法なのです。
主体性は「教えないこと」で育つのか
だからといって、若手が求めるままに、上司が手順や答えをすべて示せばよいということでもありません。
上司がすべてを決め、そのとおりに進めさせていては、若手は自分で考え、判断する経験を積むことができません。
大切なのは、教えることと、考えさせることを分けて考えないことです。
仕事をするために必要なことはきちんと伝え、そのうえで、自分で考え、判断する余地をつくる。最初からすべてを任せるのではなく、経験を重ねながら、少しずつ自分で判断できる範囲を広げていくことが必要です。
どこまで教え、どこから考えさせるのか
若手にどの程度自分で考える範囲を与えるかは、仕事の内容や企業風土によって異なります。また、同じ仕事でも、本人の経験や習熟度によって任せられる範囲は変わります。
安全性や品質、顧客への影響などを考えれば、決められた手順を守ることが重要な仕事もあります。一方で、目的や条件を理解したうえで、本人の判断に任せられる仕事もあります。
大切なのは、すべてを指示することでも、最初から本人に任せることでもありません。
何を守る必要があるのか、どこまで自分で判断してよいのかを伝え、その範囲を成長に合わせて少しずつ広げていくことが、主体性を育てることにつながります。
「見て覚える」の本質を、今の育成に生かす
上司自身が「見て覚える」経験から身につけた、自分で考えること、試してみること、失敗も含めた経験から学び取ることには、今の若手育成にも大切なものがあります。
「見て覚えるか、丁寧に教えるか」のどちらかを選ぶのではなく、若手がやがて自分で考え、判断し、行動できるようになるために、何を教え、何を任せるのかを考える。
それが、今の若手育成に求められているのではないでしょうか。

